皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
第四章

忍び寄る影






あれから何日か過ぎて、少しずつ覚えていく携帯の操作。
定食屋のママさんのLINE、バイト先の電話番号。

お父さんが寝てから夜に布団でこっそり観る初めての動画。


たまに入る黒川君からのLINEのメッセージ。



日常生活が少しだけ変化するが、私の気持ちは晴れないまま。


自分の立場をわきまえて


この言葉の破壊力、何日も引きずってしまう。
秀紀さんがあそこまで私にストレートで言うほど黒川君はこの世界で特別な人間なんだろう。

わかってる、わかってますよ。

分かりすぎてぐうの音も出ない。


こっそり検索する黒川君の名前。
芸名は【瑠色】で流石にフルネームではないけど、下の名前はそのままなんだ。本名とも公開してる。

瑠色

綺麗な呼び名と漢字。
これで【るい】と呼ぶんだね。


私、自分の名前が幸子って気にもしたこと無かったけど幸せって漢字が使われているのに、なんでかな。

幸せってなんだろね。

生きてるだけで幸せってよく聞くけど、明日の1日が見えないこんな生活も幸せって言えるのかな。

バイト代から出す家賃。
日払いで出た給料で少しの食料。
100円ショップで揃える日用品。

欲しくても買えない可愛い服。
欲しくても買えない穴が空いていない靴。


みすぼらしいな、本当に。

黒川君、私ね、凄い貧乏なんだ。私も貴方くらい凄い才能と惜しまない努力、輝く容姿があったらこんな生活していないかな。

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