皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました

「出席日数が足りねぇ!!」
「でしょうね。」


珍しく朝の定食屋のバイト先に現れた黒川君が、ご飯を食べるサラリーマン達に紛れてカウンターに座って叫んでいる。


「芸能人は大変だな。」
「学生も有給あればいいのにな。」

サラリーマンの男性に何人もからかわれながら、ママさんと私で回転率の早いお客の食べた食器を片付けていく。

壁にはママさんが書いた大きなポスターで



【芸能人がお忍びで来店してる時は騒がないように!!!】


と、瑠色のサイン色紙と共にデカデカと貼ってあるので暗黙のルールで、ご飯を食べに来たお客さんは黒川君の姿を見つけても自然に過ごしてくれている。

そもそもここの定食屋は基本的男性で、会社前に朝ごはんを食べる中年のサラリーマン、仕事が終わったトラックの運転手が多く、黒川君目当てに見に来る女性達は余程の事じゃない限り会えない。

ていうか数回しか来たことが無いので、会えない事が当たり前といえば当たり前なんだが、



「補習とかダルいって~!!」

と、当の本人が大騒ぎしてるものだから身も蓋もない。


「仕方ないじゃん。全然学校来ないんだもん。追試のテストだってギリギリだったでしょ?」
「忙しいんだよ~!!」


テーブルを拭きながら黒川君に声をかけるが、私は私服の上に割烹着。

黒川君は補習の為制服を着ている。




そう、稼ぎ時の夏休み。
彼は足りない出席日数に余儀なくされた補習。



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