皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
お父さんが寝ている夜中、こっそり洗面所で初めて袖をとおす水色のシャツワンピース。
よく見ると細いストライプ柄で袖がふんわり広がって、襟元も丸くて女の子らしい。首元から胸元までの白いボタン。足首まであるスカートの丈。動きやすい柔らかい素材。
色で決めちゃったけど、こんなの着たことないから似合うの?と、かなり不安になってくる。
残念なのは、これに伴う靴も帽子も何もないこと。
こういう時にお化粧を覚えておくべきだった。
ファミレスのバイトが終わって、丸一日汗水垂らした後に体臭をプンプンさせて会うのは流石の私でも嫌すぎる。
「せめて…髪は整えるべき?」
入学式より伸びた髪の毛。気付けば耳の下にあった髪の毛が肩より長くなっていた。
悩んで悩んで悩みまくって、1000円カットの床屋さんではなく、人生初めての美容室に行こうと決めた。
勿論身体を綺麗にしてから。
変な時間にお風呂に入ると、お父さんの機嫌を損ねる可能性があるため、これも悩みまくって銭湯に行こう!!
いくら下の容姿の私でも、せめて小綺麗にしてから黒川君の誕生日プレゼントを渡したい。
そして犠牲になるのは…
ファミレスのバイトだ。
4ヶ月間毎日休みも取らない私にチーフが、いい加減休んでくれ、労基に引っかかると半泣きでお願いされたことがある。泣く泣く休みの連絡を入れて電話先でチーフに休む日にちを伝えると、「ありがとう!」とお礼を言っていた。…複雑な気分。
頭の中でマイナスの時給と、カット代と銭湯代の金額を足してやっぱり止めようかなと何度も思ったが、ここは黒川君の為にグッと堪える。
そして迎えた当日。