皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました

「お任せでもいいかな？」
「お任せ…？」
「うん、私のセンスでも良いかな？」
「はい。」
「了解です。じゃあちょっとシャンプー台に移動してもらいますね。」


首にタオルを巻かれ、ツルツルの生地でてるてる坊主になったかと思えば外されて移動する。

さっき頭洗ったんだけどなぁ、やっぱり臭かったのかなと心配になりながら良い匂いがするシャンプーに、少し嬉しい気持ちになる。

頭をタオルで巻いて、またてるてる坊主にされて鏡の前の椅子に戻り、少しだけ緊張がほどけてきたので、

「なんか…挙動不審でごめんなさい。初めてで。」

と、ハサミとドライヤーを用意しているお姉さんに素直に謝る。

「全然だよ！初めては緊張するよね。皆そんなもんだよ～。この前のお客さんなんて、シャンプーする前に緊張し過ぎて靴脱いじゃった人もいたよ～！」
「そうなんですか？」

接客慣れしているのか、話しやすいトーンで話してくれるお姉さんに有り難い。

「とりあえず重たいのはバッサリすいちゃうけど大丈夫かな？」
「それはもう…全然何でも…。」
「OK～任せて～。」


頭に巻いている白いタオルを外し、ザクザクと私の髪の毛を床に落としていく。
全ての緊張が抜けた訳でもない。鏡に映る可愛いくない自分と向き合うのはなんだかあまり良い気分がしなくて、目線だけをキョロキョロ動かしてしまう。


「これから何か用事あるの？」

切りながらお姉さんが私に話しかけるので、

「あの…彼氏と…会います。」

と、嘘だけど嘘じゃない返事をする。