皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
「あら~!それはもう変身しましょう~!!え~彼氏って同じ学校?」
「…はい。」
「ひゃ~!いいねいいね~!彼氏カッコいい?」
「…はい。」
…はい。凄く凄くカッコいいです。
きっと多分、お姉さんも知ってる人です。
その人、他の誰よりもカッコいい人です。
だから私
少しでも変わりたくて此処に来たんです。元が悪いから変わらないかもしれないけど、少しでも可愛いくなりたいんです。
彼の隣に並んだ時に、ほんの少しでも釣り合いたいんです。
心の中ではスラスラ話せる言葉。
自分で切っているガタガタの前髪、チョキ…チョキ…と、慎重なハサミの音が目を瞑って聞いていく。
ドライヤーをかけている間も、どんな変身をしたのか少し不安でまだ目を開けられずにいた。
「ねぇ~まだ時間ある?」
「はい?」
ドライヤーを持って髪の毛を乾かしているお姉さんの言葉に、ずっと閉じていた瞼が思わずパチっと目を開けてしまう。
明らかに軽くなった髪の毛に、ほぼ完成している前下がりのふんわりとしたボブヘア。
ガタガタの前髪もバランス良く段がついていた。
「ちょっとだけお化粧してもいい??もうこういう女の子、可愛いくするの大好きでさ~。」
「は?え?」
あれよあれよと、眉毛にカミソリを入れられ、初めて嗅ぐお化粧の匂いと、くすぐったいメイクブラシの毛先。
「私、本当はメイクアップアーティストになりたくてさ。それで美容師免許を取得したんだけどさ~。ぶっちゃけ稼げないのよね~。実績のないメイクアップアーティストなんて。」
「………。」