皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました

『いやちょっとかくかくしかじかで…。』
『それで通用するの二次元世界の中だけだからな。んで、何処にいる?』
『今いる所は定食屋の近くだよ。どうしたらいい?』
『あ、それならタコ公園に向かって。俺も向かうから。』


タコ公園。
最近はお父さんが大人しいから全く避難することがなくなった公園。

そういえば初めて黒川君と会話した場所もここだった。


『了解です。』
『あとでな。』


日はすっかり暮れていて、星があちこち見えている。
ここから歩いて15分ほどの距離に、夜とは言えども気温がまだまだ暑く、せっかくの流した汗も、またじんわりと浮き出てきてしまう。

お化粧落ちないかなぁ。

せっかくメイクをしてくれたこの顔も、少し早足で歩いてしまうのはこれから会える高揚感のせいだ。

じんわりとこめかみの汗を感じ、タコ公園の道のりを歩いていく。



公園に着いて辺りを見回しても人影らしいものが居なく、なぁ~んだと思ってベンチに着替えた洋服とプレゼントが入った紙袋を置いて腰かける。

電灯の明かりに虫達が集まっているのが見えて、足元や顔の周りに名前もわからない小さな蛾が飛んできて気持ち悪い。

明かりから離れているベンチとはいえ、夏の夜の虫達の本気を見せられているような気がする。

近くに寄ってくる虫と、手で追っ払いながら戦っていると。



「何してんの。」

と、聞き慣れた声が暗闇の向こう側から近寄ってきた。



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