余命１年半。かりそめ花嫁はじめます～初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで～

　言葉が出てこない。声が出ないのではなく、どうやって言葉にすればいいのかわからないという感じだ。

　嘘、やだ、怖い……どうしたらいいの？

「人が多くて疲れませんか？　私も挨拶してばっかりで、もうちょっとゆっくりご飯食べたかったです」

　りほさんは若干気まずそうにしつつも、愛想よく話してくれる。きっとなんとか普通に接しようとしているのだろう。

　私もそうしたいのに、笑顔は強張るし頷くので精一杯。心臓はドクドクと波打ち、冷や汗が流れる。

　そんな私の異変に、りほさんが気づくはずもない。彼女は小さなため息を漏らして伏し目がちになり、憂いを帯びた笑みを浮かべる。

「……やっぱり羨ましいです。芹澤先生にあんなに想われてるなんて。いつからの付き合いなんですか？」

　たぶん、そう聞かれているのだと思う。かろうじて理解はできるけれど、なんだかはっきり聞き取れない。答えも頭に浮かんでいるのに、口を開くだけで言葉にできない。

　血の気が引くのを感じて俯く私に、りほさんが首をかしげて「清華さん？」と呼ぶ。さすがになにかおかしいと感じたのだろう。怪訝そうに次々と質問を投げかけてくる。