余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
立ち尽くす私に小さく頭を下げ、りほさんは会場へと歩き出す。私は近くにあったソファに力が抜けたように腰を下ろし、しばし呆然としていた。
今の状態では会場に戻れない。かと言って、このままここにいたら夏くんは心配するだろう。
とりあえず、恐る恐るもう一度招待状を開いてみる。すると、さっきまで意味をなさなかった文字が普通に読めるようになっていることに気づいた。
治った?と目を開いた直後、「天乃」と呼ぶ声が響いてはっとする。そちらを見やり、心配そうにする夏くんが駆け寄ってきてギクリとしたものの──。
「夏くん……!」
自然に名前が口から出てきて、心底ほっとした。そうか、今みたいな症状は長くは続かないんだと、いくらか冷静になって分析する。
咄嗟に食べすぎで具合が悪くなったことにして、なんとかごまかした直後、病院から夏くんに呼び出しがかかった。いつもなら彼と離れるのは名残惜しいが、今日ばかりはよかったと思ってしまう。
走り去る彼を見送り、私は再びソファに身体を沈めた。
……ついにここまで症状が出てしまったか。原因はわかっているし、いつかはこうなると覚悟していたけれど、実際に体験するとものすごく怖かった。
私の頭の中にいる〝悪魔〟が、すべてを食い尽くす日は近いのかもしれない。
今の状態では会場に戻れない。かと言って、このままここにいたら夏くんは心配するだろう。
とりあえず、恐る恐るもう一度招待状を開いてみる。すると、さっきまで意味をなさなかった文字が普通に読めるようになっていることに気づいた。
治った?と目を開いた直後、「天乃」と呼ぶ声が響いてはっとする。そちらを見やり、心配そうにする夏くんが駆け寄ってきてギクリとしたものの──。
「夏くん……!」
自然に名前が口から出てきて、心底ほっとした。そうか、今みたいな症状は長くは続かないんだと、いくらか冷静になって分析する。
咄嗟に食べすぎで具合が悪くなったことにして、なんとかごまかした直後、病院から夏くんに呼び出しがかかった。いつもなら彼と離れるのは名残惜しいが、今日ばかりはよかったと思ってしまう。
走り去る彼を見送り、私は再びソファに身体を沈めた。
……ついにここまで症状が出てしまったか。原因はわかっているし、いつかはこうなると覚悟していたけれど、実際に体験するとものすごく怖かった。
私の頭の中にいる〝悪魔〟が、すべてを食い尽くす日は近いのかもしれない。