余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
 症状が悪化していくと、急に嘔吐したり、自力でトイレに行けなくなって漏らしてしまったり、白目をむいて倒れたりすることもあるという。

 自分がそうなっていく姿を、好きな人に見せたくない。これは私の、最後の乙女心だ。

 彼の前では絶対に気づかれないようにしよう。そう心に決めて【カッコよすぎ】と茶化した返事を送り、メッセージの画面を閉じた。


 部長にも連絡をして、検査するため数日休みがほしいと伝えた。脳腫瘍のことを伝えたのは、会社では彼だけ。

 ものすごく驚いて心配していた彼は、『仕事のほうは気にしなくていいから、必要な分だけ休んで』と快く応じてくれた。

 ありがたく休ませてもらった私は、翌日には両親と一緒に東京の大学病院へ行き、もう一度様々な検査をした。

 腫瘍の一部を取って生体検査をしなければ正確な診断はできないが、MRIなどの所見はやはり柏先生と同じ。グレードは3か4じゃないかという見解で、それでもあまり症状が出ていないのは不思議だと話していた。

 悪いほうを想定していたので、もう驚きはしない。私の余命は一年半だと思って過ごすことにする。

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