余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
夏くんとふたりで遠出するのは、おそらく最初で最後だろう。
そのデートを週末に控えたある日の夜、私は自分の部屋のベッドに座って秋奈と電話をしていた。最初はメッセージでやり取りしていたのだが、デートの話になった途端、彼女から興奮気味に電話がかかってきたのだ。
詳細を話した今、彼女の顔が緩みまくっているのは見なくてもわかる。
《兄貴と大阪デートか~。順調すぎるくらい順調に進展してるじゃない》
「そう……なのかなぁ。お疲れ様会って感じなんじゃ」
《なわけあるかーい!》
食い気味に激しく完全否定された。キレのあるツッコミが清々しい。
《だって、普段めんどくさがって絶対そんなことしようとしない兄貴が、わざわざ自分から誘ってんのよ? 下心がないほうがおかしいって。天乃も本当はそう思ってるんじゃないの?》
そう問いかけられ、少々ドキリとする。図星を指されたから。
ずっと、自惚れてはいけないと思っていた。けれど、花火大会でのキスやプレゼントの指輪、そして大阪デート……そのすべてをただ〝偽婚約者だったから〟という理由で片づけるには苦しい気がしてきている。