余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
 だから今度のデートも、深い意味はないと思っていたいのだ。ふたりで会えるだけで十分。これを最後の思い出にして、いい加減に彼のもとから離れなければ。

「秋奈たちはガッカリさせちゃうだろうな……」

 ぼんやりと天井を見つめて力なく呟いた。

 秋奈と慎ちゃんにはまだ病気を打ち明けていない。休職する時期になったら嫌でも慎ちゃんに知られてしまうので、その前には話そうと思っているが、気を遣わせたくないし悲しませたくもないから余命までは言わないつもりだ。

 でも……包み隠さず話すのと内緒にしておくのとでは、どちらが悲しませてしまうんだろう。

 考えても答えの出ない問題が、ずっと頭の中をぐるぐると巡っていた。


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