余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~

 デート当日、家族は遠出するのを心配しながらも、なにかあったら絶対に夏くんを頼ることを条件に送り出してくれた。

 結構歩くはずなので手足の麻痺が出てしまったら困るが、数分で治まるし、熱中症対策で休み休み行くのでなんとかごまかせるだろう。もちろん、薬もしっかり持っている。

 午前八時、待ち合わせ場所の新横浜駅へ向かうと、構内のコンビニ前で夏くんがすでに待っていた。ポケットに片手を入れ、気だるげな雰囲気を漂わせて立っている姿も魅力的で目を引く。

 早足で近づく私に気づいた彼の顔にふわりと笑みが生まれ、「おはよ。今日も可愛いな」とさらっと褒め言葉を口にした。なぜか夏くんが言うとお世辞な感じがしないから、私は毎回ドキッとしてしまうのである。

 チケットは夏くんが用意してくれていて、さっそく新大阪行きの新幹線に乗り込んだ。今日は呼び出しはかからないようにしたと言いきっていたので、安心して一日楽しめそう。

 彼とふたりで新幹線に乗るのも初めてで、いつもと違ったシチュエーションに子供みたいにわくわくしている。この時間も貴重すぎるなと思いながら、動き出した景色と、隣に座る彼との会話を楽しむことにした。

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