余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
 言葉にするのは、再確認するのと同じだからつらい。加えて、絶句してショックを隠せない秋奈を見るのも苦しい。これでは余命なんて到底言えそうにないけれど、私の気持ちは伝えさせてもらう。

「だから、今普通に生活していられるうちに、やりたいことをやろうって決めたの。夏くんと偽装婚約した本当の理由もそれ。少しでもそばにいて、思い出を作りたかった」

 そう、それだけでよかったんだ。まさか本当に愛してもらえるなんて思いもしなかった。

 結果、あんな形で別れることになってしまうなら、偽装婚約をしたのは間違いだったかもしれない。

 でも、決して後悔はしていない。一度だけでも、好きな人に愛される喜びを知れて幸せだった。

 本当に自分勝手だけど、と自嘲気味の笑みをこぼしてまつ毛を伏せると、慎ちゃんが深刻そうな顔で問いかける。

「夏生には話したのか?」
「ううん。言うつもりもない」
「なんで……!? 兄貴に相談すれば、なんとかいい方法が見つかるかもしれないじゃない」

 普段はあまり激しく感情を露わにしない秋奈が、今は眉尻を下げてやや声を荒らげる。それだけ親身になってくれているのだろう。

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