余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
 静まり返っている私たちのテーブルに、店員さんがやってきて手際よく料理を置いていく。

 楽しい気分に切り替えようと、「食べよ!」と言って箸に手を伸ばそうとした時、俯いていた秋奈がふいに顔を上げる。

 彼女はビールのグラスを手に取り、いい飲みっぷりで半分ほど減らしてドンッとテーブルに置いた。涙目になりつつも、表情には力強さを取り戻している。

「そうよ、まだわからない。今はとにかく、手術が無事終わることを祈るしかないわよね。前も言ったけど、天乃が決めたなら外野があれこれ言っても仕方ないし」
「……そうだな。どの道を選ぶかは天乃の自由だ」

 慎ちゃんも頷いて、「退院したらまた飯食おう」とやっと口元を緩めてくれた。さりげない励ましが嬉しい。

 私がどんな選択をしても最終的に応援してくれて、悩んだ時は寄り添ってくれるふたり。友人としての愛しさが膨れて、心の声が自然に言葉になって出てくる。

「ありがとう。夏くんはもちろん、秋奈と慎ちゃんも大好きだよ。ふたりと友達になれてよかった」

 ちょっぴり恥ずかしいことを口にすると、秋奈はまた瞳をうるうるさせて「もうやめてよぉ~」と私の背中をバシン!と叩く。

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