余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
翌日は、私が担当から外れる取引先へ挨拶回りをした。と言っても、私は本来ただの営業事務で慎ちゃんにくっついていただけなので、今回も彼と一緒に軽く挨拶をする程度だが。
降任で仕事を引き継いでいる子は後輩の女子で、頑張り屋でしっかりした子なので私も安心して任せられる。
はきはきと挨拶をする愛想のいい子だし、彼女も慎ちゃんについていくようになったらきっと皆に気に入ってもらえるだろう。
いくつかの施設を回り、午前中最後にやってきたのは白藍だ。
贔屓にしてくれていた管理栄養士さんは、私が担当から外れることをとても寂しがっていたけれど、『いつでもまた戻ってきてね』と声をかけてくれた。私のプレゼンを認めてくれた人、彼女にも心から感謝している。
挨拶を終えた頃には午後十二時を過ぎていた。病院の外では今日もうだるような夏の日差しが待ち構えていて、出るのが億劫になるけれどこうしてはいられない。
「外暑そ〜。早く涼しいとこ行ってご飯食べよ!」
「どっちかっつーと、早くここから去りたいんだろ」
出入り口に向かってさっさと歩いていると、慎ちゃんが呆れ顔で言った。夏くんに会わないようにしたい心情をしっかり見抜かれていて、苦笑いするしかない。