余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
「こういう時に限って会っちゃうものだからね。でも、お腹空いたのも本当。なにがいいかなー、やっぱ冷やし中華?」
「こんなに元気なのに、もうじき入院するなんて信じらんねぇな……」

 複雑そうにする慎ちゃんに、私は明るく笑ってみせた。最近の楽しみといえば、本当に美味しいものを食べることくらいだから。

 話しながら総合受付の前を通り過ぎようとした時、前方からやってきた女性と目が合い、お互いに「「あ」」と声を漏らして足を止めた。

 休憩に入るところなのか、ベストにスカーフを巻いた受付の制服姿で財布を手にしているりほさんだ。

 会ったのは夏くんじゃなく、りほさんだったか……。パーティー以来なので少々気まずい。

 彼女も同じなのだろう。ぎこちない笑みを浮かべてこちらに近づき、会釈する。

「清華さん、こんにちは。お仕事に来てらしたんですか?」
「ええ、そうです。りほさんはこれから休憩に?」
「はい。もしよければ……少しお話が」

 彼女は私の隣りにいる慎ちゃんをちらりと見て気にしつつ、遠慮がちにそう言った。このまま気まずいのも嫌なので、私も応じることにして慎ちゃんを見上げる。

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