余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
「慎ちゃん、先にご飯食べててくれる?」
「……わかった」

 微妙な空気を感じ取ったらしい彼は快く頷き、「失礼します」とりほさんに頭を下げて歩き出した。さすが、空気の読める男は応対がスムーズだ。

 りほさんの話というのは、十中八九夏くんとのことだろう。病院で話す内容でもないので、出てすぐのところにあるカフェに向かうことにした。

 北欧風の可愛らしくこぢんまりとしたお店で、軽食もあるが飲み物がメインなのでお昼時の今もそこまで混み合っていない。小さな丸いテーブルを挟んで向き合って座り、とりあえず冷たいラテを頼んだ。

 ひと息ついたところで、いつもの笑みはなく神妙な顔をするりほさんが「さっそくですが」と切り出す。

「芹澤先生から聞きました。清華さんとは、偽装の関係だったこと」

 単刀直入にそう言われ、私は少し動揺しつつ彼女を見やる。

「夏くんが言ったんですか?」
「はい。やっぱりこの間の清華さんの態度が気になって、彼に確かめてみたら認めてくれました」

 そうだよね、私のあの様子からなにも疑わないほうがおかしい。夏くんももう嘘をつく気はないのだろうし、私たちの関係は本当に終わったんだなと、今さらながら虚無感を覚えた。

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