余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
「誰かのものにはならないでほしくて、りほさんの邪魔をしてしまいました。全部私のワガママなんです。本当にすみませんでした」

 姿勢を正し、彼女に向かってしっかりと頭を下げた。今日会わなければ謝ることすらしなかっただろう。……最低だな、私。

 自分に嫌気が差して俯いたままでいると、大きなため息と「……困った人たちですねぇ、まったく」と呟く声が聞こえてきた。

 そしてなにかを思案するような間があった後、腹立たしげな声が投げかけられる。

「最初から告白していればよかったのに。おかげでこっちは、秘密の関係になったふたりを盛り上げるスパイスにされたも同然ですよ。気分はコリアンダーですよ」

「コリ……ご、ごめんなさい」

「あなたのそのワガママのせいで、芹澤先生はこれから大変なことになりそうですし」

「え?」

 聞き捨てならないひと言にドキリとして、平謝りしていた私はぱっと顔を上げた。彼女は真剣な面持ちで私を真正面から見つめている。

「私の父が、婚約は偽装だったと知って腹を立てているんです。先生を呼んで話をすると言っていたし、このままだと彼の信頼を失うどころかキャリアに傷がつくかもしれません」

 一気に危機感が高まり、私の表情も身体も強張った。夏くんの医者としての立場に影響が……?

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