余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
「お咎めなしでしたか?」
「ああ。君のお父さんは寛大だね」

 話の最後に、院長は『誰に迷惑をかけたわけでもないし、問題にすることはないから安心してくれ』と言ってくれた。その懐の広さには感銘を覚えるほどだが、俺の返答次第ではこれだけでは済まなかったかもしれないな。

 小さく頷いたりほさんは、バツが悪そうな笑みを浮かべて本音を吐露する。

「私、先生たちに嘘をつかれていたのが悔しくて。父ならなにか罰を与えてくれるんじゃないかって、意地の悪いことを考えて告げ口したんです。でも本当に先生が好きなら、そんな風にしてないで幸せを願うべきなんじゃないかとも思っていたので……よかったです」

 彼女は反省した様子でまつ毛を伏せる。

「私は自分のことしか考えてなかった。こういう女だから選ばれなかったんですね、きっと」

 落ち込んでいるようだが、彼女は決して自分勝手ではないし、何事も素直に受け止められるところがいい部分だと思う。

「りほさんにはりほさんのよさがある。俺はそれ以上に天乃に惚れていただけで、あなたを愛する人は必ずいるよ」

 そう声をかけると、彼女は一瞬目を丸くした後、ふっと口元を緩めた。

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