余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
「天乃はなにも変わらないし、また皆で遊べるようになる。絶対、俺がそうするから」

 医者は特に責任を持てないことを言ってはならないが、俺は本当にそうできると思っている。秋奈にそれが伝わったのかはわからないが、すがるように俺を見上げる。

「兄貴のこと信じるからね。嘘ついたら激マズハンバーグ食べさせるからね」
「天乃が作ったやつがいい……」

 不満げに呟く俺に、秋奈は「贅沢言うな」と返し、涙目のまま少し笑った。

 帰っていく彼女を見送り、やっと病室に入る。天乃はいつものように明るい笑顔を見せるが、若干赤くなった目は隠せない。

「忙しいのに、いつも来てくれてありがとね」
「俺が会いたいから来てるんだよ」

 当然のごとく返して、嬉しそうに微笑む彼女のそばに歩み寄る。椅子に座り、指輪をはめずに指先で弄っている彼女に手を重ねた。

「指輪、新しいの買わないとな。緩いから外れやすいだろうし」

 それで失くしそうになったのかもしれないし、早く用意したいなと思っていると、天乃は物憂げな顔でぽつりと呟く。

「……この指輪をくれた時、なんて言ってくれたっけ」
「え?」
「細かい会話が思い出せないの。花火大会の時も、大阪に行った時も。夏くんとのことだけは絶対に忘れないようにしようって、この一カ月思い出を作ってきたのに。全部、忘れたくなんてないのに……」

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