余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
八時間に及ぶ手術は無事終わったものの、それからICUで過ごした一日が最高につらかった。
頭を切った傷が痛み止めをもらっても痛くて、自力では寝返りも打てない。おかげでほとんど眠れず、体勢を変えたくなるたび看護師さんを呼ぶのも申し訳なかった。
薬のせいなのか脳を弄ったせいなのか、吐き気もすごくて食事もまったく受けつけず、しばらくは水分を採るのもやっとだった。
とはいえ夏くんのオペは完璧で、あんなに綺麗に腫瘍を取れる人はそうそういないと、手術に関わった様々な科のドクターたちが舌を巻いていたらしい。最低な気分の中でも、その話を聞いた時は胸が高揚した。
ただし、たとえ一パーセントでも残っていたら悪性腫瘍は再発する可能性が高い。またこのつらさを味わわなければいけないのかと思うと気が滅入るし、正直もう手術したくはないが、彼と生きるためには頑張るしかない。
ここに入院してから、夏くんは毎日私に会いに来てたくさん温かい言葉をかけてくれる。
二度目のプロポーズも、涙が止まらなくなるほど嬉しかった。彼から無償の愛を与えてもらえて、私は幸せ者だと断言できる。