余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
「清華さんが『遠くへ行く』と言っていた理由もわかりました。病気だから、彼の負担になりたくなかったんですよね。でも、清華さんがいないほうが先生は元気をなくしてましたよ」

 そういえば、看護師の三浦さんも『清華さんが入院してからのほうが、芹澤先生が生き生きしてるんです。病気はもちろん心配なんだけど、毎日会えるのが嬉しいんでしょうね』と呆れたように笑っていた。

 私が一度去った時、そんなに落ち込んでしまったのかとわかると、離れるのはまったく彼のためではなかったのだと思い知らされる。

「好きならそばにいればよかったのにね。中途半端なことして逃げただけで、なにも彼のためになっていなかった」
「でも、清華さんはそれが先生にとって一番いいことだと思ったんでしょう。私は自分の気持ちを最優先にしてしまっていたので、そこまで相手のことを考えられるのはすごいです」

 俯きがちになっていた顔を上げると、りほさんはバツが悪くなったように苦笑を漏らした。

「私は、力を持っている父をあてにしているところもあったし。こんな女に魅力なんてないですよね。そう気づいたから、先生がどうすれば幸せになれるのか自分なりに考えて、あの日清華さんと話そうって思ったんです」

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