余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
 オフィスカジュアルなパンツスタイルに着替えながら少しだけ思案し、もう一度メッセージを送信する。

【でも嫌な夢見てなかなか寝れなくて、顔が酷いことになってる】

 これは、まぶたが腫れ気味だったりクマができたりしているのをごまかすための嘘だ。慎ちゃんは私と同じ会社で働いている先輩でもあって、この後会うことになるから。

 私がこんな顔になっているのは、寝不足のせいなのは本当だが、原因は悪夢ではない。まさに夢であってほしいと思うくらいの出来事が起こって、それについてずっと考えていたからだ。

 でもメッセージで送った通り、もう大丈夫。私は立ち直りが早いほうなのだ。

 気休めのマッサージのつもりで目の周りを軽く押していた時、スマホからピコンと音がした。トーク画面には、鼻が長くて、白いパンツを履いたような模様の黒い動物のスタンプが、プレゼントとして送られてきている。

 これを送ったのは夏くんだ。この時間に反応があるとは思わなかったので、ちょっとびっくりする。

「これ……バク?」

 ゆるキャラっぽい可愛さがあるスタンプを見て首を傾げていると、夏くんから今度はメッセージが届いた。

【天乃にあげる。バクは悪夢を食べてくれるらしいから】

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