余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
 いや、夏くんだけじゃなく秋奈とも見ていないな。彼女はレストランで接客業をしているから、ここ数年は勤務と重なって都合が合わなかったのだ。慎ちゃんとは残業中にたまたまオフィスから見たことはあるけれど、それでは純粋に楽しめなかった。

 皆でわいわい楽しく見るのもアリかもしれない。私が一緒に思い出を作りたい相手は、夏くんだけじゃないのだから。

「秋奈たちにも声かけてみよっか。最近あんまり皆で会えてないし──」

 言いながら腰を上げて夏くんのそばに寄り、食器を片づけようと手を伸ばしたその時、手首をぐっと掴まれた。ドキッとして固まる。

「なんであいつらと一緒に行かなきゃいけないんだよ。婚約者がいるのに」
「え?」

 なぜか少々不機嫌そうに呟いた彼だったが、瞳には心なしか甘さを含ませて私を見上げる。

「ふたりだけで行こう。デートの邪魔されたくない」

 独占欲を感じる言葉に、心臓が飛び跳ねた。

 こ、これは偽の婚約者の体で言っているんだよね? きっと、パーティーで婚約者として振る舞うための練習みたいなものなんだろう。そうわかっていてもドキドキしてしまう。

 好きな人に誘われて反論できるはずもなく、私は嬉しさを隠せない笑顔で「うん」と頷いた。

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