余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
 彼の粋な計らいに、胸がほんわかした。

 夏くんはこういう人なのだ。普段はのほほんとしているけれど、よく気がついてさりげなく気遣ってくれたり、的確なひと言をくれたりするとても優しい人。外見も内面も、私にとっては世界一素敵な男性だ。

 それにしても……。

「なんでバクのスタンプ持ってるのよ」
【なんでバクのスタンプ持ってんだよ!】

 私がひとりごつと同時に慎ちゃんがまったく同じツッコミをするものだから、つい声を出して笑ってしまった。

 どうやら【バクって検索したら出てきた】らしく、わざわざダウンロードしたのかと思うとまたほっこりした。プライベートの夏くんは、どこか脱力系っぽい緩さを感じさせる。

 しかし、彼から続けて真剣なメッセージが届く。

【悪夢ばっかり見るようなら、精神的な問題かもしれないから一度ウチにおいで】

 こうやって気にかけてくれるのは、さすがお医者様という感じだ。夏くんは白藍(しろあい)総合病院で働く、とても優秀な脳神経外科医なのである。

〝ウチ〟というのも病院のことなのだが、ここはあえて茶化してみよう。

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