余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
 清華(きよはな)家の長女である私は、二十六歳の現在も実家暮らしをしている。自営業で車の板金塗装の仕事をしている父とその事務仕事を手伝う母、大学四年生の弟のごくごく一般的な四人家族だ。

 私たち家族は仲がいいほうだと思う。両親は愛し合っているのがわかるし、私も弟も大きな反抗期はなかったし、和やかな空気に包まれているわが家は居心地がいい。

 朝、リビングに下りると母がすでに朝食を用意してくれていて新聞を読んでいる父と一緒に食べる。家庭的な女ではないが、母が忙しい時は私が料理をするしひと通りの家事はできる。

 私たちがリビングに集まっている間、弟はまだベッドの中だろう。大学生っていいご身分だなと呆れるも、車が好きな彼は将来家業を継ぐ気でいるので、そこは頼もしく思っている。

 私は申し訳ないけれど板金屋の仕事をする気にならず、普通のOLとして就職した。家族からも周りの人たちからも、天真爛漫でわが道を行く子だと言われる通り、私はこれまで自分の好きなことを自由にやらせてもらって感謝している。

 朝食を食べたらメイクをして、ふわっとカールしたセミロングの髪を整える。童顔で平凡な顔立ちだけれど、特に盛ったりせずナチュラルメイクを心がけて。

 このルーティンを終え、家を出て朝日と外の空気に触れる瞬間が、なにげに好きだ。

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