余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
「やっぱり原因は婚約者さんとのことなんでしょう。ケンカでもしたんですか?」
「ケンカはしてない。……しいて言うなら、あの子が可愛すぎるのが原因だな」

 真顔で呟くと、両側を歩いていたふたりの足が同時に止まった。俺は構わずに歩き続ける。

 天乃が可愛すぎて、俺の理性がバグを起こしそうなんだ。記念パーティーまではあと一週間もないが、いつまで耐えられるだろうか。

 難しい顔をして歩く俺の後ろから、ふたりが驚きと戸惑いを含んだ調子でコソコソと話しているのが聞こえてくる。

「……さすがの芹澤先生でも、恋の病には太刀打ちできないみたいですね?」
「できていたら、もっと早くに婚約してた気がします」

 まったくもってその通りだ。天乃に好きな男がいると誤解していなければ、とっくに行動に移していたというのに。

 恋の病ほど難解で厄介なものはないなと、慣れないことで頭を悩ませつつ医局へ向かった。


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