余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
「彼女、ヨージョー食品に勤めてるんだろ? 栄養士さんが『清華さんはすごい』って一目置いてた」
「心臓外科のほうでも話に出るんですね」

 天乃の仕事ぶりがそこまで評価されているとは思わず、俺は目を丸くした。

 管理栄養士も俺たち医療チームの一員となって患者のサポートをしているので、栄養状態を情報共有する機会が多々あるのだが、その時に俺も天乃のことは聞いていた。

 なんでも、全然食事をしなかった患者が、天乃がすすめた栄養食を試したら少しずつ食べてくれるようになったらしい。彼女が自社商品についてよく理解し、栄養士の悩みを親身に聞いて、患者が一番食べやすく欲しているものを提案したおかげだろう。

 天乃が働き始めてしばらく経ってその話を聞き、俺まで嬉しくなったし、一生懸命な彼女を誇らしく思った。

「俺も、人として尊敬してますよ。そういう子だから、好きになったんです」

 心の内がそのまま言葉になって、自然に口から出てくる。そんな俺を見て、明神先生は穏やかな笑みを湛えていた。

 食事を終えた人たちでだいぶ賑やかになってきた中、席に戻る明神先生一家を見送る。

「息子ちゃん可愛かった~。明神先生夫妻もすごくいい人で……ん? どうかした?」

 にこにこしていた天乃は、俺が見つめているのに気づきキョトンとして首をかしげた。

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