余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
 しかし本人は素敵な発言をした自覚はないようで、斜め上に目線を浮かせて小首をかしげる。

「って、なんかアホっぽい?」
「ちょっとね」
「否定して」

 軽いやり取りが楽しくて終始顔をほころばせながら、愛しさを込めて天乃を見つめる。

「俺は好きだよ。天乃の、そういう単純で前向きな考え方が」

 俺と目を合わせた彼女は、一瞬固まった後じわじわと頬を赤く染め、恥ずかしそうに「ありがと」と呟いた。

 ……あ、今のは告白みたいなもんだったか?と気づくと同時に、天乃が急にぴしっと背筋を伸ばす。

「わ、私、トイレに行ってくるね! 夏くん、先に戻ってて」
「あ、あぁ」

 あたふたした調子でロボットのように動き出す姿にぽかんとしていたものの、彼女の耳が赤くなっているのに気づいて口元が緩んだ。

 好きだと口にしたのは初めてだが、あれだけで照れるなんてどこまでウブなんだか。天乃自身も愛していると告げたらどんな表情を見せてくれるのだろう。

 早く会を終えてふたりきりになりたい。その逸る気持ちを抑え、ひとり会場の中に戻った。

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