余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
「夏くん……! ごめんね、こんなとこにいて」
「いや、どうかしたのか?」
「ちょっと食べすぎたみたいで、急に具合悪くなっちゃって。結構量多かったよね」

 お腹の辺りをさすってへらっと苦笑いする天乃は、なんだか空元気な気がする。さっきまでなんともなさそうだったのに、急すぎやしないか。

 違和感を覚えて眉をひそめるも、彼女は明るく笑って立ち上がる。

「でも、もう平気! ご心配おかけしました」
「本当に? 無理するなよ。つらいならもう帰る──」

 彼女の腰に手を回そうとした時、スラックスのポケットに入れていたスマホが振動し始める。白藍からだ。天乃が「出て出て」と言うので、申し訳ないが通話ボタンを押した。

 今日はパーティーなので、病院のほうは最低限の人員で回している。脳外科に救急の患者が来ることはそこまで多くない。なにかあったら俺が出ようと思ってはいたが、このタイミングで連絡が来るとは。

 患者の容態を簡単に聞き、電話は繋いだままにして天乃に確認する。

「悪い、救急で呼び出しがかかった。……具合は本当に大丈夫か?」
「大丈夫! 患者さんを優先して」

 先ほどの不安げな様子はなく、しっかりと答えてくれたのでいくらか安堵する。彼女を信じて小さく頷き、「わかった。すぐ向かうからオペの準備しておいて」と告げて通話を終了した。

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