スカイ・ネイル
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旅人を送った後男は街へ戻るなり、とある人物の元へと足を急がせた。
その人物は男がきっとこの後自分のところへ駆け付けてくるだろうと予測していたのか、宿泊していた家の前で微動だにせず立ち尽くしている。
「あなたの言うとおり、今回もあの瞳の持ち主が訪れたことによって街が豊かになりました!雨が降るなんて誰が予想できたことか」
「だから言っただろう」
フードで隠されたその顔はこちらからは認識することができない。
ただ声色から男性であることだけがわかる。
「それじゃあ約束通り、僕はこれで失礼するよ」
「もう行ってしまわれるんですか。全然ゆっくりしていただいて構わないのに」
しゅんとする男を見かね、フードの人物はふっと口元を緩ませた。
「事が済んだらまた来るよ。急用が出来てしまったからもう行かないと」
「はあ・・・、ところで、あなたは何処から来られたお方で?」
「悪いけどその質問には答えられないな」
手をひらひらさせながら軽く質問を受け流すとフードの男はそのまま街を出てしまった。
ぽつんと取り残された男は考えてもその人物が誰だったのかわかるはずもなく、ただこの先実るであろうたくさんの作物に期待を寄せながら自宅へと帰ってゆくのであった。