どちらとの恋を選びますか?【前編】~元彼vs同期の秘めたる愛の行方
 その時、部屋のドアをノックする音が聞こえ、陽先輩は手を離し、私も、何事も無かったようにしていた。

 「失礼します」
 資料を持って来た夏目君が、部屋に戻って来て、私の強ばった顔を見て、何か察したのか、
 「…何か…うちの春風が答えられないことがあれば、私で対応致しますが…」
 私の隣に座って、陽先輩に声を掛けた。

 「あぁ、ありがとう。この後、打ち合わせがありましてね。また、連絡します」
 心配する夏目君に、陽先輩は笑顔で答えた。

 「では、冬月部長。本日は、これで失礼します」
 「えぇ、これからも宜しくお願いします。夏目さん、春風さん」

 私は陽先輩と目を合わせること無く、挨拶をして、部屋を後にした。

 知らなかった…陽先輩が大手企業の後継者だったなんて…

 どうして今更になって、私の担当として出会ってしまったの…

 捜した?嘘でしょ…黙って私の目の前からいなくなったのは、陽先輩じゃない。
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