どちらとの恋を選びますか?【前編】~元彼vs同期の秘めたる愛の行方
 私は、駅の前にある広場のベンチを指差した。
 「ったく…俺が、女の子1人置いて、帰れるわけないだろ?」
 「また、女の子って言った!」
 「じゃあ、女性として扱おうか?」
 真剣な眼差しで、目を見つめる。

 「…も、もぉ!からかわないで!」
 私が叩く真似をすると、腕を掴まれて身動きが出来ない。
 「…女性として扱ったら、こうなるんだぞ」
 そして、反対側の手を腰に回し、私の体を抱き寄せた。
 
 目の前に…夏目君の顔が…
 「このまま…キスされたらどうする?」
 低く響く、冷たい声で囁いたその言葉に、息を呑んだ。
 夏目君…怒ってる…よね。

 「夏目君…」
 「酔って、夜遅くに1人で、こんな所にいるのは危ないんだ。もっと自分が、か弱いことを自覚しろ」
 「だって…」
 「家までタクシーで送るから。いいな?」
 「うん…ごめんね、迷惑ばかりかけて」
 「迷惑掛けてもいいんだ。その方が…」

 私の体を離した夏目君を、じっと見つめると、
 「春風…今、そんな潤んだ目で見るなよ…帰ろうか」
 普段見ない凛々しい横顔に戸惑いながら、背中をそっと支える手に、温かさが流れ込む。
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