どちらとの恋を選びますか?【前編】~元彼vs同期の秘めたる愛の行方
 「もう諦めていたのに…」

 今、陽先輩が何か囁いたような気がするけど…

 「すみません…聞き取れなくて…」

 陽先輩は息を呑み、一呼吸おいて、
 「咲羅…どうして俺の前に、現れたんだ…」
 私を哀愁漂う目で、見つめる陽先輩から目が離せない。

 「陽先輩…それも私のセリフです」
 やっとの思いで言葉を返した。

 これは熱のせい…
思い出すのは、優しくて、いつも私の事を大切にしてくれた陽先輩の姿と声…
 
 もうこれ以上は、心も体も平常心でいられない。

 「…すみません…私、帰ります」
 ソファから立ち上がると、どうしようもないくらい、頭が痛くて、立ってるのがやっとだった。

 「ごめん、余計なこと言ったね。家まで送るよ」
 「1人で帰ります」
 「ダメだ!俺の言うことを聞け!」
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