どちらとの恋を選びますか?【前編】~元彼vs同期の秘めたる愛の行方
 このまま甘えたい気持ちもありながら、陽先輩の胸を押して、
 「陽先輩…これ以上は私…もっと熱が上がるから…」
 熱を帯びる先輩の目を見つめて、息を整えた。

 照れ笑いする陽先輩は、
 「ごめん…つい」
 私を優しく抱きしめた。
 いつも私を気に掛けて、心配してくれたよね…

 蘇る記憶に、胸が締め付けられた。

 「すみません…ご迷惑お掛けしますが、宜しくお願いします」
 「荷物は俺が持つから、行こうか」

 陽先輩に支えられながら、助手席に乗り、家の住所を伝えると気が緩み、陽先輩がナビを操作してる間、目を瞑ると、そのまま眠ってしまった…

 「咲羅…着いたよ」
 陽先輩の声に目が覚めて、外を見ると家の前に着いていた。

 「ありがとうございます」
 シートベルトを外し、荷物を持って、お礼を伝えた。

 「咲羅…部屋まで送って」
 陽先輩の次の言葉を遮るように、
 「冬月部長、助かりました。引き続きよろしくお願いします」
 そう言って、車から降りて、ドアを閉め、お辞儀をしたまま、車が動くのを待った。

 しばらく動かなかった車は、ようやく静かに動き出し、私は顔を上げて見送った。

 ありがとう…陽先輩…
 懐かしくて、好きだった頃の温かさが蘇る。

 触れられた瞬間、嫌とは思わなかった。
 裏切られても…本当の優しさを知っているから…
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