どちらとの恋を選びますか?【前編】~元彼vs同期の秘めたる愛の行方
 一瞬、沈黙があった後、
 「…なぁ、春風」
 さっきとは違う夏目君の真剣な声。
 「なぁに?」
 「…ううん、何でも無い」
 睡魔が襲う私は、ためらいがあった言葉を気に留めなかった。

 「そろそろ切るね」
 「もし何かあったら直ぐに連絡しろよ。それと」
 「もぉ…切れないじゃない」
 「そうだな、つい…また、月曜日な」

 電話を切って、思わず笑みがこぼれた。
 気心しれた夏目君と話をすると、ホッとする。
 優しくて、いつも自分より、私の事を気に掛けてくれる夏目君…

 そう思って目を瞑ると、昼間の陽先輩の顔がちらついた。
 陽先輩のことを考えると、胸が…締め付けられる。
 支えられた時の手の感触が、まだ体に残ってる。

 どうして…私にまた優しさを与えるの…
 もう、顔も見たく無いって言われる方が、ずっと楽なのに…
 諦めたのに…
 どうして、私の前に再び現れたのよ…

 涙が流れて止まらない私は、薬が効いてきたのか、いつの間にか眠っていた。
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