どちらとの恋を選びますか?【前編】~元彼vs同期の秘めたる愛の行方
 私がパソコンを持って、部屋を出ようとすると、
 「待って…話すよ」
 私を引き留めた夏目君は、椅子を引いて腰掛けた。

 「実はさ…俺、この会社の跡継ぎなんだ」
 「ふーん、そう、跡継ぎね…」
 そっか、跡継ぎだから社長と一緒に…

 「えっ!!跡継ぎって言ったよね?息子なの?」
 「あぁ、誰にも言うなよ。トップシークレットだから」
 「い、言わないけど…」
 「言うと、色々と面倒な事になりそうでさ。時が来るまでは、公表を待ってもらってる」
 「言った方が仕事しやすいし、もっと経営的な仕事、出来るのに」
 「特別扱いして欲しくないんだ。ちやほやされたりとかも、苦手だし」

 そうだね…
 ちやほやされると、嫌がる姿が目に浮かぶよ。

 誰にでも謙虚だけど、ここって時には、相手が誰であっても絶対に引かない。

 相手が気を使って、妥協したりするのは、絶対嫌がるだろうな…

 夏目君らしいよ、そういうところ。

 「あぁー、ごめんね。聞いても私、夏目君のこと、御曹司扱い出来ない」
 「だよな。だから、春風には話したんだよ。もちろん、信頼もしてる」
 「そうか…だから、少しずつ、社長と同行して、勉強してるんだね」
 「社長が、いつ自分に何かあっても、この会社を守れるようにって、顔繋ぎしてるんだ」
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