どちらとの恋を選びますか?【前編】~元彼vs同期の秘めたる愛の行方
 「おはようございます。春風です」
 「咲羅?おはよう。その声の様子なら、良くなったんだね」
 「お陰様で、休みの間に良くなりました。送っていただいて、ありがとうございました」
 「やっぱり、他人行儀なんだな…でも良かった。安心したよ」

 陽先輩の優しい声…
 この間、触れた温もりのせいで、声を聞く度に、あの頃の懐かしさが込み上げる。

 「咲羅…今度時間を」

 陽先輩の言葉を最後まで聞く前に、夏目君が会議室に入って来て、
 「春風、大丈夫か?何か、問題でもあった?」
 と、心配そうに声を掛けた。

 私は焦って、
 「では、冬月部長。またご不明な点があれば、夏目までご連絡ください。失礼します」
 それだけ言うと、慌てて一方的に電話を切った。

 「だ、大丈夫だよ。先週、途中で帰っちゃったから、続きを話してたの。後は宜しくね」

 夏目君の目を見ず、通り過ぎようとすると、
 「ちょっと待った!」
 腕を引かれて、部屋に戻されると、夏目君はドアを閉めた。
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