どちらとの恋を選びますか?【前編】~元彼vs同期の秘めたる愛の行方
 冷や汗が出るのに、焦った体は熱い。
 冬月商事を出て、しばらく黙って歩くと、夏目君が話し出した。

 「俺に黙っていた事、そんなに焦ってるって、2人でその日、何かあった?体が熱かったって、まさか…」
 「車で送ってもらっただけ!その時…熱が高くてふらふらしてたから、少し体に触れて…」

 抱き支えられた…
 その言葉を出すのを止めた。

 「咲羅って呼んで…まぁ、煽った俺も悪かったけど、明らかに、俺への当てつけだよな。きっと今でも好きなんだよ」
 「そんな事ないよ」
 「じゃあ、春風の気持ちはどうなんだ?」
 「私、フラれたんだよ」
 「心の奥底にある、本当の気持ちさ」
 「本当の…気持ち…」

 今まで、考えないようにしていた。
 私は捨てられたんだと、諦めた。
 そうしないと、何度も押し寄せた悲しみを乗り越えられなかった…

 それでも、時々覗かせた陽先輩への想い…
 もう、愛してはいけないと閉じ込めてしまった気持ち…
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