美術室で桜が散る
序章 竹内 翔太
気づくと夕日がさしている薄暗い部室に、俺はいた。
どこだかはわからない。この薄暗い埃っぽい空気に、懐かしさを感じてしまう。意識がぼんやりしているせいで、行動もままならない。
「翔太君」
はじけるような明るい声が、愛おしげに名前を呼ぶ。返事をしようとする。けれど、声が出ない。
誰?誰なんだ?行かないでくれ、頼むから、行かないで…ーーーー。
「待って!!!」
ベッドから跳ね起きる。アラームが同時に叫び声をあげる。ああ、夢か、とため息か独り言かわからないものを口から出す。じっとりと汗ばんだ背中が気持ち悪い。俺は眠気を頭から追い出すようにあくびをすると、のそのそとベッドから這いおりた。
リビングへ行くと、簡素なトースト一切れに、ミミズのような母のメモが机に置かれていた。読まずにごみ箱に捨てる。きっと、先に行くから食べてねとかそんな類の伝言だろう。読むような余裕はこちらにはないので書かないでほしい。
トーストにかじりつき、そのまま制服に着替える。机にじっとしていると、眠ってしまいそうだからである。
乱雑に脱ぎ散らかしていたスニーカーをかかとをつぶしながら履き、ガラン、とした薄暗いリビングに「行ってきます」と声を放った。声は壁に投げたボールのように、帰ってこなかった。
どこだかはわからない。この薄暗い埃っぽい空気に、懐かしさを感じてしまう。意識がぼんやりしているせいで、行動もままならない。
「翔太君」
はじけるような明るい声が、愛おしげに名前を呼ぶ。返事をしようとする。けれど、声が出ない。
誰?誰なんだ?行かないでくれ、頼むから、行かないで…ーーーー。
「待って!!!」
ベッドから跳ね起きる。アラームが同時に叫び声をあげる。ああ、夢か、とため息か独り言かわからないものを口から出す。じっとりと汗ばんだ背中が気持ち悪い。俺は眠気を頭から追い出すようにあくびをすると、のそのそとベッドから這いおりた。
リビングへ行くと、簡素なトースト一切れに、ミミズのような母のメモが机に置かれていた。読まずにごみ箱に捨てる。きっと、先に行くから食べてねとかそんな類の伝言だろう。読むような余裕はこちらにはないので書かないでほしい。
トーストにかじりつき、そのまま制服に着替える。机にじっとしていると、眠ってしまいそうだからである。
乱雑に脱ぎ散らかしていたスニーカーをかかとをつぶしながら履き、ガラン、とした薄暗いリビングに「行ってきます」と声を放った。声は壁に投げたボールのように、帰ってこなかった。
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