硝子星ー友達が俺の親友を溺愛してくる。ー【完】
心どうが不満げに言う。だが俺には見える。
頼られて喜んでいる心どうの心の中が。
あ、これも実は俺は透視が出来るとか、エスパーだからとかではなく、親友の心のうちがわかる、という程度の意味合いだ。
「そうなんだよー。二人に頼めない?」
「私放課後は残れないよ。店に出たいし」
「そのために今、宿題終わらせてるとこだ」
心どう茶屋は心どうの祖父母、旦那と女将の二人で切り盛りしている。
帰宅したらすぐに店番を交代したい心どうは、学校にいる間に宿題を終わらせるのが常だった。
俺はその付き合いで宿題をやっている。
「あー、そっか。今日多かったもんな。じゃあ今日はいいわ。邪魔して悪かったな」
「後日もお前に付き合えるかわかんねえぞ?」
俺が斜めに遠野を見上げると、「んー」とうなった。
「とりあえず会長捕獲してくるよ。じゃあまたな」
そう言って心どうの左頬に手を添えた遠野は、そのままこめかみに唇を落とした。
ちゅ、という音を立てて、すぐに離れていく。
「じゃなー」
それこそ爽やかに去っていく遠野。
顔を真っ赤にさせて固まる心どう。
注目してくる同級生たち。
遠野が生徒会室に行くために階段を上り始めたとき、一斉に「キャー!」と「ギャー!」という声が沸き上がった。
「なにあれカッコいいー!」
「あたしもしてほしい~!」
「くっそ遠野カッコつき過ぎだろ!」
「イケメンだから似合うこと過ぎるわ!」
……とまあ、心どうと遠野のことは割と学年公認というか、心どうも嫌がらせをされたりはしていない。
俺もさっさと付き合えよ、と思う毎日。
だってこいつら、こんなんしてても付き合ってないんだからな。意味わかんね。