ポケット



久々に手を繋いでしたデートは、美桃の胸を弾ませた。颯星は恥ずかしそうにしつつも、手を離さないでいてくれた。

熱帯魚などを見て、アシカやイルカのショーを楽しみ、水族館のレストランで海鮮丼を食べ、あっという間に時間が過ぎていく。これまでのデートはマンネリのことばかり美桃は考えていたため、楽しむことができなかった。それが今日は楽しめている。

「今日は楽しかった!ありがとう!」

すっかり暗くなった道を歩きながら美桃は言う。颯星も優しげな笑みを浮かべながら、「俺も楽しかった」と言う。美桃と颯星の住んでいる家は反対方向なため、途中で「またね」と別れ、美桃は鼻歌を歌いながら歩く。

(楽しかった〜!マンネリ打破できたのかな?)

久しぶりに触れた手を美桃は見つめる。自身の手のひらにはまだ颯星の手の温もりや感触が残っており、頰が緩んでしまう。その時だった。

ピロン、とスマホが音を立てる。美桃はバッグの中からスマホを取り出す。颯星からメッセージが送られていた。
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