10年後、思い出したくなる物語


それから30分くらいしてから沢崎くんが戻ってきた。



「最悪だわ。印刷室の掃除までやらされた」


入ってくるなり不服そうにそう言うと、印刷し終わったプログラムを机にドサッと置いた。

「ハハ。お前の日頃の行動のおかげだな」

末次先輩がそのプログラムを回収しながら言った。


「いや、ピュアな男子生徒捕まえて楽しんでるだけだね。あれは」

「誰がピュアだって?ねぇ?国枝さん」

急に話を振られて一定のリズムで動かしていたホチキスが少しズレた。

「さ、さぁ…」

沢崎くんがどんな人かはよく知らない。

委員会でしか喋らないし。

「つーか、そろそろ帰って良いですか?」

沢崎くんがあくびをしながら言った。

「そうだな。そろそろ終わろうか。国枝さんも切りの良いところで終わって」

「あ、はい」


パチンと最後の1束をホチキスで止めたところで、ちょうど針が無くなった。


「じゃ、お先」

いつの間に帰る支度をしたのか、沢崎くんはさっさと帰っていった。


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