10年後、思い出したくなる物語
「今度は校旗のアイロン掛けって。レパートリー豊富だな実行委員の仕事は」
旗の入ったカゴを沢崎くん、家庭科室の鍵を私が持って歩く。
「こんなにやる事多いなんて思わなかった」
「俺も。競技出た方がマシだったかもなー」
そんなことを2人で話しながら歩いていると、5分くらいで家庭科室に着いた。
「なんか甘い匂いしね?」
沢崎くんがクンクンと鼻を動かしながら匂いの在処を探している姿がなんだか可笑しくて笑ってしまう。
「今日、1年生が調理実習してたみたいだから、その残り香じゃない?」
「あー、そういうことね」
授業以外で家庭科室に入ることは殆どない。
沢崎くんは物珍しそうに色んな扉を開けて物色している。
私はアイロン台とアイロンを取り出して準備を進めた。
学校のアイロンは古くて、なかなか温度が上がらない。