10年後、思い出したくなる物語
そんな話をしていたら、プリンターの赤いランプが点灯した。

「あ、トナー切れ。先生呼んでくるか」

沢崎くんが印刷室を出ていこうとしたので呼び止めた。

「私、トナー交換したことあるから大丈夫」

体は扉を向け、顔だけこちらに向けた沢崎くんが「え。マジ?」と動きを止めた。

私はゴソゴソと印刷室の端に積まれたトナーの箱から新品を取り出した。

プリンターから古いトナーを取り外すと、すぐ隣で「へー、すげー」と感心するような声が聞こえた。

ついでに、コピー用紙も補充してプリンターの扉をパタンと閉じた。

機械音と共に再び動き出したプリンターに私は「よし、OK」と頷いた。


< 7 / 38 >

この作品をシェア

pagetop