10年後、思い出したくなる物語
「ハハッ。どんな特技?」

と言われたので

「前に先生の手伝ったから」

と返した。

「なるほどね。サンキュー」

「どういたしまして」

印刷する体育祭のプログラムは残り半分くらいだ。
既に印刷し終わったプログラムをプリンターから取り出し両手で抱えた。

「とりあえず出来た分だけ視聴覚室に…」
言いかけて途中で声に詰まった。

沢崎くんの右手の親指が私の頬を擦ったから。

「トナーついてる」

こんな風に男の子と接触する経験が無い私は、多分赤くて、すごい顔をしているんだろう。

「…あ」
ようやく声が出たその時、私の手元から印刷したプログラムがバサバサと床に、全て滑り落ちた。


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