君との恋のエトセトラ
「荷物はこれで全部だね?」
「はい」

マンスリーマンションの部屋でスーツケースに荷物をまとめた凛は、状況が飲み込めないまま航に促されて車に乗る。

「あの、河合さん?一体、何がどうなってるんですか?」
「運転しながら説明するから。じゃあ出発するよ?」
「あ、はい」

凛は慌ててシートベルトを締めた。

「まず今日から君は、別のマンスリーマンションで暮らしてもらう」
「は?」

のっけからついていけない。

「別のってどこの?」
「俺の最寄り駅の駅前。つまり俺のマンションから徒歩5分のところにある」
「ええ?!それってものすごく家賃が高いですよね?私、とてもじゃないけど払えません」
「そこで相談なんだけど…」
「そこで?!って、どこで?」

いいから黙って聞く!と、航は横目で牽制する。

「俺、外食すると夜は毎回2万くらい使うんだ」
「ひゃー!何そのいきなり武勇伝!億万長者の武勇伝?」
「は?何だよそれ。とにかく!俺は君に以前のようなハウスキーピングを頼みたい。君が夕食を作ってくれたら、毎回1万支払うのが妥当だと考える。それでも外食の半額だから、俺にとってもいい話だ。しかも君の手料理は美味しくて身体にいい。俺は外食より君の手料理の方が食べたいんだ。だから君を雇いたい。どう?引き受けてくれる?」
「は?え?何を?」
「ちょっと!寝ぼけてんの?」
「起きてますけど、話が頭に入ってこなくて。河合さん、日本語しゃべってますよね?」

当たり前だ!と航は突っ込む。

「じゃあ幼稚園児でも分かるように言う。朝起きて、仕事に行く。帰ってきたら、俺のマンションで夕食を作る。1万円受け取って帰る。分かった?」
「分かりませんよ!だってそんなことしたら、河合さんは私に毎月いくら払うことになるんですか?」
「んー、平日の週5でお願いしたら、月20万ちょい?」
「おかしいでしょ?!そんなの」
「え、計算間違ってる?」
「そういう問題じゃなくて!夕食作っただけで月20万なんて、どこにそんな話がありますか?」
「ここにありますが?」

凛は、ムキーッ!と手足をバタつかせる。
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