君との恋のエトセトラ
そうこうしているうちに、航のマンションが見えてきた。
「道覚えて。俺のマンションから出てここを曲がって大通りに出て…。少し進んだ左側。はい、ここね」
航は車を低層マンションの駐車場に停める。
「手続きしてあるから、今夜からここに住んでね。部屋は3階の角部屋」
そう言うとトランクから凛のスーツケースを取り出して、スタスタとエントランスに入っていく。
凛は慌ててあとを追った。
案内された部屋は、今まで住んでいた部屋の2倍程の広さで、キッチンも使い勝手が良さそうな明るい雰囲気の部屋だった。
「わあ…素敵なお部屋。絶対お高いですよね?ここの家賃」
「まだ言ってる。そんなに俺が家賃払うのが嫌なら、身体で払おうか?」
「いいいいえいえ!お身体は結構です」
「ははは!じゃあ、そういうことで」
そう言って部屋を出ていこうとする航を、凛は思わず呼び止めた。
「あの、河合さん!」
「ん、何?」
「えっと、コーヒー飲んでいってください。インスタントですけど」
凛は、キッチンにあったものをまとめて入れた袋をスーツケースから取り出し、お湯を沸かしてインスタントコーヒーを淹れた。
カップを手に、二人並んでベッドに座る。
「河合さん。いつの間にこの部屋の手続きを?」
「んー、仕事を早めに切り上げてね」
「それって、今日ってこと?」
「ああ。ネットで検索してここに決めた」
「もしかして…。昼休みの後、木原さんから話を?」
ためらいながら尋ねると、航は手元のカップを見つめながら頷いた。
「相談されたんだ、あいつに。君とは一緒に暮らせないけど、どうしても心配だってね」
「そうですか。私、木原さんのお気持ちに応えられなかったのに。申し訳ないです」
「謝る必要はないよ。断るのは悪いからって理由でイエスの返事をされる方が、男にとっては辛い」
「ですが、木原さんにも河合さんにもご迷惑をおかけしてしまって。妙さんや勝さんにも。本当に心苦しいです」
「誰も迷惑だなんて思ってない。みんな君の力になりたいと思ってるよ。そう思わせているのは君だ。懸命に頑張る君だからこそ、みんな少しでも助けたいと思うんだ」
「私、だから…?」
凛は航の言葉を噛みしめる。
「ああ。君のひたむきさはみんなの心を浄化する。だから君のそばにいたくなる。君の笑顔を見ていると、こちらまで嬉しくなる。だから君には笑っていて欲しいんだ」
ゆっくりと諭すように語りかける航に、凛は目を潤ませた。
「みんな君から幸せをもらっている。だから君には誰よりも幸せになって欲しい。それがみんなの…、俺の願いだよ」
航は凛の瞳を優しく覗き込むと、笑顔でポンと頭に手を置いた。
「道覚えて。俺のマンションから出てここを曲がって大通りに出て…。少し進んだ左側。はい、ここね」
航は車を低層マンションの駐車場に停める。
「手続きしてあるから、今夜からここに住んでね。部屋は3階の角部屋」
そう言うとトランクから凛のスーツケースを取り出して、スタスタとエントランスに入っていく。
凛は慌ててあとを追った。
案内された部屋は、今まで住んでいた部屋の2倍程の広さで、キッチンも使い勝手が良さそうな明るい雰囲気の部屋だった。
「わあ…素敵なお部屋。絶対お高いですよね?ここの家賃」
「まだ言ってる。そんなに俺が家賃払うのが嫌なら、身体で払おうか?」
「いいいいえいえ!お身体は結構です」
「ははは!じゃあ、そういうことで」
そう言って部屋を出ていこうとする航を、凛は思わず呼び止めた。
「あの、河合さん!」
「ん、何?」
「えっと、コーヒー飲んでいってください。インスタントですけど」
凛は、キッチンにあったものをまとめて入れた袋をスーツケースから取り出し、お湯を沸かしてインスタントコーヒーを淹れた。
カップを手に、二人並んでベッドに座る。
「河合さん。いつの間にこの部屋の手続きを?」
「んー、仕事を早めに切り上げてね」
「それって、今日ってこと?」
「ああ。ネットで検索してここに決めた」
「もしかして…。昼休みの後、木原さんから話を?」
ためらいながら尋ねると、航は手元のカップを見つめながら頷いた。
「相談されたんだ、あいつに。君とは一緒に暮らせないけど、どうしても心配だってね」
「そうですか。私、木原さんのお気持ちに応えられなかったのに。申し訳ないです」
「謝る必要はないよ。断るのは悪いからって理由でイエスの返事をされる方が、男にとっては辛い」
「ですが、木原さんにも河合さんにもご迷惑をおかけしてしまって。妙さんや勝さんにも。本当に心苦しいです」
「誰も迷惑だなんて思ってない。みんな君の力になりたいと思ってるよ。そう思わせているのは君だ。懸命に頑張る君だからこそ、みんな少しでも助けたいと思うんだ」
「私、だから…?」
凛は航の言葉を噛みしめる。
「ああ。君のひたむきさはみんなの心を浄化する。だから君のそばにいたくなる。君の笑顔を見ていると、こちらまで嬉しくなる。だから君には笑っていて欲しいんだ」
ゆっくりと諭すように語りかける航に、凛は目を潤ませた。
「みんな君から幸せをもらっている。だから君には誰よりも幸せになって欲しい。それがみんなの…、俺の願いだよ」
航は凛の瞳を優しく覗き込むと、笑顔でポンと頭に手を置いた。