君との恋のエトセトラ
ようやく動き出した車内で、航が怪訝そうに尋ねる。
「君、マンスリーマンションに住んでるの?」
「はい。思いのほか早く就職先が決まって、アパートを探す時間がなかったので。今度の休みの日に不動産屋さんを回りたいと思っています」
「そうなんだ。ある程度目星はついてるの?」
「いえ、まったく」
すると航はスマートフォンを取り出して、何やら検索し始めた。
「んー、こことかはどう?」
単身者向けのマンションの物件を表示した画面を凛に見せる。
「うちの会社にも電車一本で15分で着くよ。駅からも近いし、セキュリティもしっかりしてる。3階だから女の子の一人暮らしでも安心じゃない?」
「あ、はい。とても良い物件ですね。ただ、その…」
思わずうつむく凛の顔を、ん?と航が覗き込む。
「あの、予算的にちょっと…」
「ああ、なるほど。どれくらいで探してるの?」
「えっと、安ければ安いほど良くて…。駅から遠くても、どんなに古くても構いません。1階でも、セキュリティがなくても、何でも」
「何でもって訳には…。女の子が夜道を一人で歩くのも心配だし、一人暮らしならセキュリティだってそれなりにないと危険な目に遭うかもしれないよ?それにうちの会社で働くなら、給料もそこまで低い訳ではないと思うけど?」
「それは、そうなんですけど…」
言い淀んでいると、「着きましたよ」と運転手に声をかけられた。
「あ、はい。では私はここで」
そう言ってメーターを確認すると財布を取り出す。
「いいよ。俺が勝手に送ったんだし」
「でも…」
「あのね、何度も言うようだけど。俺も一応、男としてのプライドがあるんだ」
「えっと…。では、お言葉に甘えさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「もちろん。今日は勤務初日で疲れたと思うし、ゆっくり休んで。ヤロー共の酒につき合ってくれてありがとう」
「いえ、こちらこそ。本当にありがとうございました。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
凛はタクシーを降りると、深々と頭を下げて見送った。
「君、マンスリーマンションに住んでるの?」
「はい。思いのほか早く就職先が決まって、アパートを探す時間がなかったので。今度の休みの日に不動産屋さんを回りたいと思っています」
「そうなんだ。ある程度目星はついてるの?」
「いえ、まったく」
すると航はスマートフォンを取り出して、何やら検索し始めた。
「んー、こことかはどう?」
単身者向けのマンションの物件を表示した画面を凛に見せる。
「うちの会社にも電車一本で15分で着くよ。駅からも近いし、セキュリティもしっかりしてる。3階だから女の子の一人暮らしでも安心じゃない?」
「あ、はい。とても良い物件ですね。ただ、その…」
思わずうつむく凛の顔を、ん?と航が覗き込む。
「あの、予算的にちょっと…」
「ああ、なるほど。どれくらいで探してるの?」
「えっと、安ければ安いほど良くて…。駅から遠くても、どんなに古くても構いません。1階でも、セキュリティがなくても、何でも」
「何でもって訳には…。女の子が夜道を一人で歩くのも心配だし、一人暮らしならセキュリティだってそれなりにないと危険な目に遭うかもしれないよ?それにうちの会社で働くなら、給料もそこまで低い訳ではないと思うけど?」
「それは、そうなんですけど…」
言い淀んでいると、「着きましたよ」と運転手に声をかけられた。
「あ、はい。では私はここで」
そう言ってメーターを確認すると財布を取り出す。
「いいよ。俺が勝手に送ったんだし」
「でも…」
「あのね、何度も言うようだけど。俺も一応、男としてのプライドがあるんだ」
「えっと…。では、お言葉に甘えさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「もちろん。今日は勤務初日で疲れたと思うし、ゆっくり休んで。ヤロー共の酒につき合ってくれてありがとう」
「いえ、こちらこそ。本当にありがとうございました。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
凛はタクシーを降りると、深々と頭を下げて見送った。