君との恋のエトセトラ
「いらっしゃいませ!」

凛の明るい声が店内に響く。
常連の男性客は、凛を見るなり破顔した。

「凛ちゃん、久しぶりー。元気だった?」
「はい、お陰様で」
「土曜日しか会えないから、毎週土曜の昼と夜はここにお弁当買いに来るよ」

ありがとうございます!と微笑む凛の横で、妙が呆れ気味に言う。

「それって『買いに来るよ』じゃなくて、『凛ちゃんに会いに来るよ』の間違いじゃない?」
「妙さん!そんな…。勝さんのお弁当が美味しいから、昼も夜も食べたくなるんですよね?」

取り繕う凛に、男性客はまたにっこり笑う。

「うん。それに凛ちゃんの笑顔が見られたらもう最高」
「あら?私の笑顔はおまけにもならないってこと?」
「た、妙さん!えーっと、今日はおでんもよく味が染みててオススメですよ」
「そうなんだ。じゃあ凛ちゃんにお任せでいくつかもらおうかな」
「はい!大根なんて、もう絶品です」

凛はいくつか選んで容器に入れると、つゆもたっぷり入れてフタをする。

男性が選んだ弁当と一緒に会計をして、
「ありがとうございました。美味しく召し上がってくださいね」
と笑顔で手渡した。

「ありがとう、凛ちゃん。また夜にね」
「はい、お待ちしております」

見送ると、すぐまた次の客が現れる。

「こりゃ、土曜はいつもの倍作らないとな」

厨房から勝治は目を細めて、凛の様子を見守っていた。
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